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調査員のおすすめの逸品№397 【番外編】インターン実習生、人生初めての展示に挑む2026!
わたしたちは、京都橘大学文学部歴史遺産学科2回生の畑佐有香・奥平結菜・寺崎遥斗です。2026年度の京都橘大学文学部地域インターンシップ実習生として、令和8年8月17日から21日までの5日間、公益財団法人滋賀県文化財保護協会で仕事について学び、その内容を生かして展示実習を行いました。
実習では、『発掘調査から調査報告書の刊行まで』に関する展示・展示解説を行いました。実際の発掘現場や整理室に伺い、作業されている調査員さんや、作業員・調査補助員のみなさんに取材をさせていただき、その成果をもとに展示と解説を制作しました。その成果のうち、展示については、次の1)~4)のような形で公開されることになりました。
1)展示名
公益財団法人滋賀県文化財保護協会・京都橘大学文学部歴史遺産学科連携展示──発掘調査から調査報告書の刊行まで──
2)展示会場
滋賀県埋蔵文化財センター 1階ロビー
3)展示会期・会場での展示解説
会 期 令和8年8月21日(金)からしばらくの間
展示解説 令和8年8月21日(金)14:00~14:30
4)展示制作者
2026年度京都橘大学文学部地域インターシップ実習生(京都橘大学文学部歴史遺産学科2回生 畑佐有香・奥平結菜・寺崎遥斗)
展示には、できる限りの成果を盛り込んだつもりですが、反映しきれなかった成果もあります。そこで以下に、取材と展示の成果の総括として『発掘調査から調査報告書の完成まで』を、インターン生の視点でご紹介したいと思います。
1.発掘現場の作業工程
①表土掘削
現地での発掘調査は、重機を使って表土を取り除くことから始まります(画像1)。

重機には発掘調査ならではの工夫が施されています。普通の重機のバケット(土を掘る部分)には、ギザギザの爪がついて、土をザクザク掘りやすいようになっています。しかし、発掘用の場合は、そのバケットの爪の部分にはわざわざ鉄板を取り付け、地面を平らに、きれいに削りやすくしています(画像2)。そうすることで、土の色や質の違いを認識しやすくして、地層の境目や遺構を確認しやすくしています。

遺構が検出できる地面を遺構検出面といいます。調査員さんたちは、調査区の端で確認できる地層の重なり(画像3)などを観察し、土の色や質などの情報を大切な手がかりにしながら、遺構検出面を探し出し、発掘調査を進めています。

調査員さんたちは、こうした地層から読み取れる情報をもとに、重機を操縦するオペレーターさんに指示を出し、重機で掘る深さを決めています。こんなときの調査員さんは、 勘や経験だけを頼りにしているわけではありません。地層から得られる情報を一つひとつ踏まえ、分析を積み重ねながら、慎重に作業を進めています。
重機による表土掘削が終わると、ここからは人の手による細かな調査が始まります。ここからは、道具、掘削、記録、出土品の管理まで、発掘現場の仕事を順番に見ていきます。
②道具紹介
発掘では、作業の細かさや土の状態に合わせて、さまざまな道具を使い分けます(画像4)。オレンジの道具がA箕(み)、左から順にB手ガリ、C幅狭手スコ、D幅広手スコ、E手バチ、Fスコップ(シャベル)です。

A 箕(み)
土を入れる際に使用するプラスチック製の道具。手スコなどで掘り出した土を集め、廃土置き場まで運ぶのに使用する。
B 手ガリ
遺構検出のために地面を薄く削り取っていく際に使用する。これで上手に削ると、地層や遺構埋土が見えてくる。それでも分かりにくい場合は、土を削る時の感触や音などにも注意しながら慎重に削る。片手両刃ガマと呼んだりもする。
C 幅狭手スコ・D 幅広手スコ(移植ゴテ)
遺構検出ができて、遺構を掘り進めていく際に使う道具。小さい土器などが埋まっているかもしれないため、これで慎重に掘り進めていく。幅の広いスコップと幅が狭いスコップは遺構の大きさなどで使い分ける。
E 手バチ
土を砕きながら掘る際に使用する道具。刃の横幅が広くなっており、遺跡を傷つけずに作業を進めていくことができる。
F スコップ(シャベル)
土を大まかに掘ったり、土を運ぶ際に使用する道具。地層や地面を平らに削る際にも使用する。
③遺構検出
表土を取り除いたら(画像5)、遺構の検出を始めます。

画像6では、遺構の掘削が始まっていますが、これに先立って遺構の検出作業が行われています。この調査区の場合、遺構の土は、周囲の地面の土より黒っぽく、粘りのある土です。こうした色や質の小さな違いを手がかりに、遺構の範囲を見極め、どこを掘るのかを決め、その形を確認しながら慎重に掘り進めます(画像7)。


④記録・保存
発掘では、遺構や遺物を見つけて掘るだけでなく、検出状況や出土状況などを記録として残していくことも大切です。遺構や遺物の検出・出土状況は、写真を撮影し、実測図として記録していきます。
実測図には、地形図・地層図・平面図・断面図などがあり、これらの図面や写真によって、「どこで、何が、どのような状態で存在していたのか」を後からでも分かるようにします。
遺構の実測図は、実際の遺構を確認しながら、形や位置などを書き込んでいきます。遺構は一度掘ってしまうと元の状態には戻せないため、そのときにしか見ることのできない情報を、測量機器なども使って正確に記録化して残していきます(画像8・9)。


⑤出土品の管理
遺構を掘っていくと、様々な遺物が出土します(画像10)。見つかった遺物は、どこから、どのような状態で出土したのかを記録したうえで取り上げます。取り上げたあとは、出土した年月日、出土場所、出土層などの情報を書き込んだ紙を同封し、袋に入れて管理します。

遺物の管理方法は、その材質や状態によって変わります。木製品は、土の中から取り上げたあと、速やかに水に浸けこみます(画像11)。乾燥すると、変形したり傷んだりするからです。そのため、水に浸けた状態で乾燥を防ぎながら保管します。

2.発掘現場から室内での整理作業へ
こうして発掘現場で取り上げられた遺物は、室内で作業されます。現場で残した図面や写真、出土位置などの記録も、遺物を調べていくための大切な情報として引き継がれていきます。
⑥洗浄
室内での整理作業の最初の一歩は、水洗洗浄です。発掘された遺物には、まだたくさんの土が付いています。水につけながらブラシなどを使い、遺物を傷つけないように少しずつ土を落としていきます(画像12)。洗浄した遺物は、カゴに並べてしっかりと乾燥させます(画像13)。


ここまで、現地での発掘調査から遺物の洗浄・乾燥までの流れを紹介してきました。このあと遺物は、接合や実測、写真撮影など、さまざまな室内整理の作業を経て、調査の成果としてまとめられていきます。私たちがインターンシップの一環として作成した展示では、現地での発掘調査や遺物の洗浄を含め、遺物が発掘されてから調査成果としてまとめられるまでの流れを紹介しています。以下、作成した展示パネルと展示ケースの様子をご覧ください。













3.展示してみてわかったこと
今回の展示では、発掘された埋蔵文化財が、どのような過程を経て整理・記録され、保存されていくのかを分かりやすく伝えることを目標にしました。また、作業の流れを紹介するだけではなく、その一つひとつの工程で文化財と向き合う「人」の姿が見える展示も目指したところです。
実際に展示をつくってみると、伝えたい情報を並べるだけでは、必ずしも「伝わる展示」にはならないことに気づきました。限られたスペースの中で、何を見せるのか、どの写真を使うのか、どんな言葉なら分かりやすくなるのか。そして、何を削るのか。一つひとつ選びながら展示をつくる難しさを実感しました。
きっと、誰にとっても100点の展示はありません。見る人によって興味をもつところも、分かりやすく感じる表現も違います。だからこそ、見る人の立場を想像しながら、「どうすればもっと伝わるだろう」と考え続けることも、展示をつくる面白さの一つなのだと思いました。
あとがき
土の中から見つかった遺物が、私たちの目に触れる「文化財」になるまで。──そこには、発掘、洗浄、接合、実測、記録、保存など、多くの工程と、それを支える人たちの手があります。普段、博物館などで何気なく目にしている一つの遺物の向こう側にも、こうした地道な仕事の積み重ねがあります。
この展示とホームページが、その過程を知る一つの入口となり、「埋蔵文化財って、ちょっとおもしろいかも」と思っていただけたなら、私たちにとってこれ以上嬉しいことはありません。
そして今回の展示制作は、インターンシップに参加した私たち学生にとっても、文化財に関わる仕事を実際に見て、聞いて、体験し、自分たちなりに考える貴重な機会となりました。
発掘や室内整理の方法を学ぶだけでなく、そこで得られた情報を正確に記録し、文化財を未来へ残していくこと。そして、その成果や価値を分かりやすく誰かに伝えることも、文化財を守る仕事の一つであると学びました。
自分たちが教えていただいたこと、実際に体験したことを、今度は「展示」という形にして誰かへ伝える。学ぶ側から、伝える側へ。その両方を経験できたことは、このインターンシップで得た大きな学びです。
今回得た経験を、この展示だけで終わらせるのではなく、これから文化財や歴史について学んでいく中でも生かしていきたいと思います。





(京都橘大学歴史遺産学科2回生 奥平結菜・畑佐有香・寺崎遥斗)